2017年にカルビーが企画製造販売するご当地ポテチの第二弾に、滋賀県の味として鮒ずしポテチが登場しました。
このニュースが発表された時、Twitter上等では非常に大きな話題となり、そして実際に発売が始まると「スーパーに鮒ずしポテチが並んでいた!」等の目撃情報や、食べた感想等をTwitterに投稿する人等が続出しました。
その後も実際に鮒ずしポテチを食べた人の食レポ等が多くのブログに登場しましたが、いくつかの食レポブログを読んでいて何かしっくりこないというか、ひっかかる物がありました。
そうです、鮒ずしを食べた事もない人の鮒ずしポテチの食レポが大半だったのです。
多くの人が鮒ずしを食べたどころか見たこともなく、もちろん臭いを嗅いだこともないので、味の是非を判断することができず、これは鮒ずし味なのか?という問いに答えられずにみんな困っているようでした。
そこで発売されて既に完売となり、もう入手することができないのですが、ちょうどご当地ポテチ第三弾が始まり、奈良の柿の葉寿司味等が話題になっているこのタイミングで、世界一詳しい鮒ずしポテチの食レポを書いてみようと思います。
ご当地ポテチとは?
カルビーが企画販売しているご当地ポテチは大人気で、その地域でしか買えない地域の味のポテトチップスはこれまでもたびたび発売されては話題となり、旅行のお土産としても人気です。
この大人気企画を日本全国に拡大した「カルビーポテトチップス47都道府県の味」が2017年にはじまりました。
これまでのご当地ポテチは、特定の地域の商品しか存在していませんでしたが、今回の企画では47都道府県全てのご当地ポテチが製造販売されます。
誰もがふるさとや現在住んでいる地域があると思うので、日本国民全てが楽しめる企画ですよね。この企画は2017年から2018年にかけて、3回に分けて発売されます。
- 第一弾:2017年9月18日~
- 第二弾:2017年11月13日~
- 第三弾:2018年2月19日~
いずれもなくなり次第終了で、追加の製造販売等はないので、どうしても食べたい商品は発売されたらすぐにでも購入した方がよさそうです。
コンビニやスーパー等で販売されるので、その対象地域であれば比較的簡単に入手できるのですが、在住地域以外のご当地ポテチを手に入れるのは、なかなかハードルが高そうです。
鮒ずしを食べたことのない人たちの鮒ずしポテチの感想は?
ネット上に投稿された鮒ずしポテチの食レポや感想を書いている人達の大半というかほとんどは、ふなずしを食べたことも臭いを嗅いだこともない人たちでした。
逆に鮒ずしを普段からよく食べている人からしたら、この企画はさほど興味がなかったのかもしれません。
関東の人からしたら、関西の人は鮒ずしを食べたことがある人が多いと思っておられるかと思いますが、関西人といえど滋賀県人以外の人が鮒ずしを食べることはまずありません。
また滋賀県外で鮒ずしを漬けている家庭がないのと、滋賀県外で鮒ずしを作っているメーカーも存在しません。鮒ずしを食べることができるお店も、滋賀県外にはほぼ存在しません。
そのため今回Twitter等に投稿していた人達は、大半が滋賀県人以外の関西人だったようです。
鮒ずしは知ってるけど、食べたことがない。ただしめちゃくちゃ臭いことは知っている。そんな鮒ずしがポテチになった!!そんな感じで興味を持って食べた人が多かったようです。
鮒ずしを食べたことのない人の食レポの傾向としては、
店頭で見つけてびっくり
鮒ずしポテチは滋賀県内だけでなく、近畿でも販売されました。
パッケージがオレンジ色で、ポテトチップスうすしお味に似ていたこともあり、ぱっと見うすしお味かと思ったけど、ちゃんと見たらなんと鮒ずし味だった!
とびっくりした人もいたようです。
開封時になんとなく魚っぽい香り
鮒ずしということで、みなさん相当覚悟して開封していたようです。
封を開けた瞬間に鮒寿司特有のすごく臭い匂いがすると思っていたのでしょう。
でも実際はそれほどでもなく、拍子抜けという感じでした。
しっかり嗅ぐと若干魚っぽい香りを感じとったようですが、むしろ酸味の香りが特徴的で、さきイカ等のするめの匂いにいているという声も多かったです。
味はしょっぱい
肝心の味ですが、実際の鮒ずしを食べたことがないので、なんとも言えない反応が多かったようです。
フレンチサラダ味や、すっぱむーちょに似ているという声が多く、これが鮒寿司の味かー、と鮒寿司ポテチの味を、本物の鮒寿司の味と理解してしまう人もまれにおられました。
総じて感想は「以外とおいしくて、普通に食べられる」という声でした。
本当は皆さん「こんなポテチ、臭くて食えない!!」みたいなのを期待していたようですが、あまりにも普通でおいしく食べられたので、とまどいの声も多く、もっとパンチが欲しかった等の声もありました。
鮒ずしポテチはこうして生まれた
滋賀県のご当地ポテチを企画するにあたって最終候補に残ったのは「小鮎甘煮味」「牛肉じゅんじゅん味」「ふなずし味」「エビ豆味」の4つだったそうで、ふなずし味以外の物に決まりかけていたところ、最終的にはインパクト重視で鮒ずし味に決まったそうです。
確かに他県のご当地ポテチ等を見ていると「小鮎甘煮味」「牛肉じゅんじゅん味」「エビ豆味」とか、すごくありそうな感じです。
ただ他県のご当地ポテチを見ていても、そんな郷土料理初めて聞いたとか、それ何?みたいなのも多く、もし鮒ずし以外に決まっていたら、おそらくそんな感じになっていたことでしょう。
もちろんその県の人が知っていたらいいのですが、「牛肉のじゅんじゅん味」と言われても、滋賀県人でも何それ?の人が大半だと思います。エビ豆とかもかなりマニアックです。
そんな鮒ずしポテチの開発には、滋賀県大津市出身のカルビーの女性社員の方も関わったそうです。
味だけでなく、パッケージにも多くのこだわりがあり、おそらくこの女性社員の方も、小学校5年生の時に「湖の子」に乗ったのでしょう。
通常のご当地ポテチは、平均して20回程度の試作を繰り返すそうですが、この鮒ずしポテチはなんと60回!
琵琶湖産のふなを乾燥させてパウダー状にた物をポテトに絡めて、鮒ずし味にしているのですが、このパウダーの製造に60回も試作を繰り返したそうです。
鮒ずしマニアは、鮒ずしポテチをどう感じたか?
多くのレビューが、
「ぶっちゃっけ、実際の鮒ずしを食べたことも臭いを嗅いだこともないので、なんともえいない。けどおいしい!」
というのがほとんどでした。
では、普段から鮒寿司を食べているふなずしマニアは、今回の鮒ずしポテチをどう思ったのでしょうか?
鮒ずしポテチへの淡い期待
滋賀県のご当地ポテチの味が鮒ずしと発表されてから、多くのふなずしマニアは、それがどのような味になるのか、発売の日まで非常に楽しみにしていました。
鮒ずしマニアからしたら、鮒ずしがご当地ポテチになっただけで大満足なのですが、やはりせっかくポテチになるなら、ふなずし特有の香りや味をできるだけ忠実に再現してほしい、でも実際は無理なのでは?という期待と不安が入り混じった状態でした。
味の系統としては、しょっぱさや酸味が特徴的あである鮒ずしは、ポテトチップスと以外とあうのでは?との意見もありました。
関東では入手困難
ふなずしマニアは今回の企画に非常に強く反応しました。しかし多くのふなずしマニアと呼ばれる人たちは滋賀県を離れ、東京等に住んでいる人が多いようです。
滋賀を離れてこそ、故郷を思うようになり、鮒ずしを恋しく思う。
そんな人が鮒寿司マニアとして東京にもたくさんいるのですが、東京ではふなずしポテチを入手することができず、多くのマニアが途方に暮れて、鮒寿司ポテチ難民となってしまいました。
でも東京在住のマニアは、知り合いや遠距離恋愛の彼女等に手配してもらって送ってもらったり、また帰省のタイミングで滋賀県で購入したりしていたようです。
味は?
では肝心の味をマニアはどう感じたのでしょうか?
封を開けた時に、確かにこれまでのポテチでは嗅いだことのない香りがしました。恐らくこれは鮒のフィレを乾燥させてパウダーにしたことから、この香りなのかと思われます。
ただし鮒ずしの香りではなかったです。なんとかしてふなずしポテチに、鮒ずしの香りを感じ取ろうとして何度も嗅いでみたのですが、そこに鮒寿司の香りはありませんでした。
味は上記で記載した他の方の感想同様、酸味が特徴的ですっぱむーちょやよっちゃんイカのような酸っぱい香りがしました。
もしくは初めてポテトチップス醤油バター味を食べた時の味わいに似ています。これは原材料に魚醤パウダーが使われているのと、バター自体も発酵食品の一種であることから、似たような味を感じたのかもしれません。
ふなずしの油分や甘味を感じるうま味をポテチに求めるのは酷かもしれませんが、やはり食べやすさに重点を置いたことから、なんとなく無難な味に仕上がっているようです。
結論としては、
「全くふなずしの味でも香りでもないが、頑張って鮒パウダー等をポテチに用いた事は大きな奇跡」
といった感じでしょうか。
実際にはどのような味付けがされていたのか
実際の味付けはニュース等を見ると、乾燥させたフナを砕いてパウダー状にした物をチップスに降りかけているようです。
パッケージ裏面に記載されている「原材料名」欄には、
- クリーミングパウダー
- 魚醤パウダー
- 貝エキス調味料
- 鮭パウダー
- 粉末みそ
- 調味料(アミノ酸等)
- 酸味料
- 香料
- 苦味料
等が記載されており、その並びにはちゃんと「鮒パウダー」と記載されています。「鮭パウダー」が入っているのが、ちょっと微妙ですが。
ただこの原材料を見る限り、鮒ずしの発酵要素は含まれておらず、鮒がパウダーとしてまぶされているだけなので、鮒ずし味というよりは、「ポテトチップス鮒味」というところでしょうか。
ちなみにパッケージ裏面には、
「鮒由来の小骨がまれに残っていることがありますので、ご注意ください。」
と記載されています。ポテチを食べるのに小骨に注意する必要があるとは。
本物の鮒寿司なら、逆に骨なんて全く気にしなくてよいくらい、発酵により柔らかくなっているのですが。
NigoLowならこんな鮒ずしポテチを作った
せっかくの奇跡のコラボ。カルビーの滋賀出身社員の協力や滋賀県の協力等、多くの人の協力によってこのおいしい鮒ずしポテチができあがりました。
でもやはりふなずしマニアからしたら、ちょっと物足りないというか、鮒寿司を知らないほとんどの人に「これがふなずしか」と理解されたのであれば、もうちょっと攻めてほしかったというのも正直なところです。
もちろんコストや収益性等の面もあるので、もろもろの事情は理解できますが、もし私がこの企画に携わっていたら、下記の鮒寿司ポテチを作っていたと思います。
「ピザポテト」ならぬ、鮒ずしの「飯(いい)ポテト」
最近も復活して話題になったピザポテト。ギザギザの厚みのあるポテトチップに、とろりと溶けたチーズがくっついていて、とてもおいしくて大人気です。
あのチーズの部分を、鮒ずしの飯(いい)にしてしまえば、これこそ鮒ずしポテチ。
飯(いい)が好きな人も多いし、チーズも鮒ずしも共に発酵食品ということもあり、また鮒ずしの味は海外の人には、ブルーチーズに例えられることもあるので、これは実現できれば大ヒット商品になるのではないでしょうか。
パウダーには発酵要素も加えてもっと本格的に
今回の鮒ずしポテチは、ご当地ポテチとしてはかなり攻めたことは評価できます。ただ本当の鮒寿司味を再現するには、あとこの100倍くらいは攻めないといけなかったでしょうか。
今回は鮒のフィレを乾燥させてパウダーにした物をまぶしたそうですが、それだけだとどうしても鮒寿司ではないですよね。
鮒ずしの切り身や尻尾、頭の部分を冷燻製等で燻して水分を抜き、それを丸ごと粉末にしてパウダーにすればこれこそ本当の本格鮒ずしポテチとなり「Premirem鮒寿司ポテトチップス」として売り出せるでしょう。「プレモル」ならぬ「プレ鮒」。ただ、120円では無理ですね。
鮒ずしの卵をもっとフィーチャーする
鮒ずしと言えばあのオレンジ色の卵。今回の鮒ずしポテチには、パッケージにこそ卵をもちーふとしたデザインが施されていましたが、味においては卵はノータッチ。
例えば卵の部分だけを乾燥させて一粒ずつのパラパラ状態にして、その卵をそのままチップに降りかける。
もしくは上記のピザポテトもどきの「飯(いい)ポテト」のチップに付着させる飯(いい)の中に卵も練りこんでおく。白い飯(いい)の中に、オレンジ色の卵の粒粒が混ざっていたら、すごく美味しそうですよね。
燻製にした鮒ずしの切り身が1かけらだけ入っている
ポテトチップス自体には、特別な味付けをせずに素揚げしたプレーンな状態にしておいて、パッケージの中に鮒ずしの切り身を1枚だけ入れておく。
普通の鮒ずしの切り身をそのまま入れると、水分等で大変なことになるので、冷燻製でしっかり水分を飛ばして、でも鮒ずしの香りがしっかりのこっている切り身を1枚入れておけば、密閉された袋の中で鮒寿司の香りがチップに付着しておいしくなるかもしれません。
お茶漬けにしてもおいしく食べられるようにする
裏面には通常の鮒寿司の食べ方に類した、ふなずしポテチの食べ方を紹介するのはどうでしょうか。
ふなずしポテチを砕いて、おにぎりにまぶしたり、ふなずしポテチのお茶漬けとか。
裏面にQRコードを付けて、簡単に本物の鮒寿司プレゼントに応募できるように
一番やってほしかったのは、鮒ずしポテチを食べてそれで終わりとかではなく、せっかく多くの人がポテトチップスを通じて鮒寿司に興味を持ってくれたのだから、本当の鮒寿司もぜひ食べてほしい。
そこから幾人かが本物の鮒寿司も好きになれば、鮒寿司人口が激減して絶滅の危機に瀕している鮒寿司の食文化を引き継いでいくことができるのかと。
そこでパッケージの裏面にQRコードを表示して、それをスマホで撮影すると、鮒寿司プレゼントの応募ページにアクセスできて、そこから応募できるようにしてほしかった。
鮒ずし普及の為に、この企画に協力してくれる蔵元等は、いくらでもあったと思うし、県こそこういう提案をしてほしかった。
こういう為に税金が使われるなら全然問題ないです。