鮒寿司の作り方

昔は滋賀の家庭なら、どこの家でも漬けていたふなずしですが、さすがにここ最近は自宅でふなずしを作っている家庭はかなり減ってきました。
よく混同するのが、ふなずしには、「塩切」と「本漬け」の2工程に分かれます。これをしっかり理解しましょう。ここでは、

  • 下処理
  • 塩切り
  • 本漬け
  • 管理

のステップで解説していきます。

ふなの下処理

おいしいふなずしを作る為には、下準備が重要です。

新鮮なニゴロブナを用意

ふなずしは素材が命です。3月から5月にかけての春先に琵琶湖でとれるニゴロブナを用意します。
その日に捕獲したニゴロフナを、その日のうちに下処理します。
もちろん子持ちの雌のニゴロブナになりますが、噛みごたえがあり甘味のある雄のニゴロブナも数匹一緒に漬けてもよいかもしれません。

うろこをとる

包丁で丁寧にうろこをとります。フナを傷つけないように丁寧に、且つうろこの残りがないように処理していきます。
包丁を持たない方の手でフナをしっかり押さえます。この時親指をフナのエラの中に入れてつかむと、作業がしやすいです。

エラと内臓をとる

次にエラと内臓をとります。
エラから切り目を入れて、エラの奥にある硬い骨もとりのぞきます。
内臓はエラの部分から、先の曲がった針金等を差し込んで内臓をひっかけて引き抜くように取り除きます。この時卵は破らないように丁寧に処理しましょう。
苦玉(胆のう)も忘れないように取り除きます。

水洗い

うろこ、エラ、内臓をとったフナを綺麗な水で丁寧に洗います。
この時に丁寧に洗わないと臭みが残ってしまい、後のふなずしの出来に影響を及ぼします。

水切り

洗ったフナの水切りを行います。ザルにまとめて入れて水切りします。
頭を下にして一匹ずつ吊るして乾かすのが好ましいです。

ここまでできたら下準備は完了です。

塩切り

ふなずし作りにおいて、フナを塩漬けにすることを、「塩切り」といいます。

塩切されたニゴロブナが漬け樽に漬かっています。

樽に塩漬けされたフナ

塩切されたニゴロ鮒を漬け樽から取り出した様子です。

塩切りされたフナ

塩をフナのお腹に詰める

一匹ずつ、お腹に塩を詰めていきます。この時すきまなくしっかりと塩を詰めていきましょう。頭の方にも忘れないように詰めます。
以外と忘れがちな目やひれの付け根にもしっかり刷り込みましょう。

樽にフナを敷き詰める

樽の内側にビニール袋を敷いて、その中にフナと塩を入れていきます。
塩を詰めたフナを綺麗に樽の中に並べていきます。樽の底に塩を敷いて、その上にフナをまんべんなく並べて敷き詰めていきます。
敷き詰めたフナの上に再度塩を敷き詰めて、またその上にフナを敷き詰めていきます。
このように、塩/フナ/塩/フナ/塩といったように塩とフナを交互に敷き詰めていきます。ミルフィーユみたいな感じでしょうか?
最後は塩でふたをするように塩を敷き詰めて、フナが見えないようにします。

密閉する

樽の内側に敷いていたビニール袋を紐でくくります。この時にできるだけ空気が入らないようにしましょう。閉じたビニール袋の上に内蓋をします。

漬物石を乗せる

樽の中のフナの上に入れた内蓋の上に漬物石を乗せます。
2,3日するとフナと塩がなじんでくるので、さらにその上にもう一つ漬物石を乗せます。

日陰に置く

漬物石を乗せた樽は、日陰ですずしいところに置いておきます。

これで塩切は完了です!この状態で2,3か月待ちます。
塩切までを済ませたフナを樽ごと販売してくれるお店もありますので、本漬けからを自宅でやりたいという人は、塩切されたフナを業者から買うことをお勧めします。最近では塩切フナがなんとネット通販でも買えるようです。

本漬け

ついに本漬けです!ドキドキしてきますね。

いつ漬ける?

時期は夏の土用がよいと言われています。
夏土用とは7/19の土用入りから8/6の土用明けまでの19日間ですが、これは気温の最も高い時期がフナを発酵させるのに最も適しているからです。
その年の気候にもよりますが、梅雨明け頃が好ましいのではないでしょうか。

塩切しておいたフナを洗う

エラの隙間から水道水を流し込んで、鮒の中身も綺麗に洗います。

エラから水道水を流し込む

春に塩漬けにして寝かしておいたフナを取り出して丁寧に水洗いで塩を洗い流します。
フナを縦に持って、フナの口から水を静かに流し込んでいくと、お腹の中に詰めておいた塩も綺麗に流し取れます。
丁寧にやらないと、お腹の中の卵が破れたり流れ出たりするので、慎重に作業をしましょう。

表面をたわしでこする

たわしで鮒の表面をこするようにして汚れを落とし、ピカピカにします。

たわしでこすって洗う

水道水をかけながらフナの表面をたわしで丁寧にこすり、残っているうろこやぬめり等を取り除きます。エラの周囲等、フナをピカピカに磨き上げる感じで作業しましょう。

綺麗に磨き上げると鮒が青光りします。

たわしで磨き青みが出たフナ

背びれの付け根や腹ビレ、喉の周囲等は比較的うろこが残りやすい箇所なので、その辺も入念に。
エラの裏は親指を突っ込んでこするようにしてぬめりを取ります。

綺麗に洗う前後の鮒を並べて比較してみました。

下がきれいに磨いて洗ったフナ

フナ全体に水をかけながら丁寧に磨き上げると、表面の薄黒い皮が取れて青光りしてきます。

水分をとる

エラの中にヌメリが残っている場合があるので、しっかりと拭き取ります

エラの裏側のヌメリ取り

磨いて塩抜きしたフナをキッチンペーパー等でくるんで水分をとります。この時、表面だけでなく、エラの裏側にヌメリが残っていることがあるので、頭の中の水分もしっかりとりましょう。

干す

塩切鮒をしっかり洗ったら、軒先等に吊るして乾燥させます

洗濯干しに吊るされたフナ

水分を拭きとったフナを吊るして干します。
大量のフナがある場合は、選択の物干し等に、頭を下に向けて吊るすと、たくさんのフナを干すことができます。風通しの良い日陰で数時間から一晩程度の時間干します。
この時、絶対にハエ等が近づかないようにしましょう。フナにハエが卵をうみつけるからです。
そのような点からも、屋外には干さず、屋内で扇風機の風を充てて乾かす方法がよいでしょう。

樽にご飯を敷き詰める

塩切の時と同様に、樽の内側にビニール袋を敷きます。この時、ビニール袋は2重にしましょう。
ビニールを2重に敷いた樽の底に炊いたご飯を敷き詰めていきます。ごはんは冷ましておきます。
この時作業する手に焼酎や酒を漬けてから作業します。これは焼酎や酒自体に殺菌の作用があり、また手の平をぬらさないと、ごはんが手にくっついてうまく作業ができないからです。
ごはんは3センチ程度の厚みでしきつめます。ふんわり敷き詰めるのではなく、手の平で抑えて厚みが均一になるようにします。

フナにご飯を詰める

お腹の中やエラの裏側にもしっかりご飯を詰めます

ごはんを詰めたフナ

フナにご飯を詰めていきます。しっかりお腹の奥まで詰めます。力づくてごはんをお腹に詰めこむと、お腹の中の卵が奥に押し込まれてしまうので、力加減には注意しましょう。
エラや頭部の周囲には、ごはんがはみ出るくらいに沢山つめこみます。

樽にフナを敷き詰めていく

漬け樽の中に綺麗に隙間なく鮒を敷き詰める

隙間なく敷き詰められたフナ

ご飯を詰めたフナを重ならないように向きを交互にしてまんべんなく並べて敷き詰めていきます。
綺麗に隙間なく敷き詰めたら、その上にご飯を敷いて隙間ができないように強くおさえていきます。下のフナが見えない程度にご飯を敷きましょう。
ごはんを敷いたら、その上に、先ほどの下のフナとは直角方向に(90度)向きを変えてまた同様にしきつめていきます。
時々塩を振り込んで、これを繰り返して何層にもしていきます。

空気が入らないようにビニールをしっかり閉じる

ビニール袋を閉じて樽

最後はごはんを敷き詰めて、樽の内側に敷いていたビニールを紐で縛って密閉します。

重石をする

太縄を敷き詰めて、密閉する

樽の内側に敷かれた太縄

樽の内側にわらを三つ網にした縄や太縄を敷きます。

重石を乗せる為に、内蓋を敷く

のせられた内蓋

その上に内蓋を乗せて、その上に重石を載せます。
重石の重さは、軽めの20キロ程度の物を使います。
1週間程度たったら、10キロ程度の重石を追加して、合計で30キロくらいになるようにします。

これで本漬けは終了です!

管理方法

水張り

本漬けの翌日、蓋の上から水を張る場合もあります。水を張るのは、空気と遮断するためです。
漬けこんでから2,3日すると、漬け汁が染み出てきます。漬け汁があふれるようであれば捨てます。
この時、漬け汁が周囲にこぼれたりしていると衛生上よくないので、あふれた漬け汁は必ず綺麗に洗い流すようにしましょう。

保管場所

ビニール袋をかぶせて保管する

重石を乗せて保管された樽

夏の間は温度が30度くらいの場所に樽を置いておきます。特に屋内外どちらでもかまいません。
樽をすっぽり覆うようにビニール袋を被せると雨水やほこりの侵入を防ぐことができます。
発酵により重石が押し上げられて傾いたりする場合もあるので、重みが全体に均一にかかるように、定期的にちゃんと水平になっているか確認するようにします。