鮒寿司の簡単で美味しい食べ方

臭さで有名なふなずしですが、ではどのようにして食べるか?というのは、滋賀県人以外の方はあまり知らないのではないでしょうか?
近年ではふなずしを使った様々なレシピや新しい食べ方等も紹介されていますが、ここでは定番の食べ方から、斬新なレシピまでを紹介していきます。

お茶漬け

なんと言ってもふなずしと言えばお茶漬け。滋賀県人の大半はこの食べ方で食していると思います。

  1. 熱々のごはんをお茶碗に盛り付ける。
  2. そのごはんの上に、ふなずしの切れ身を3枚程度乗せる。
  3. ふなずしの上に醤油を数滴かける。
  4. ふなずしの上から、熱々のお茶をかける。

ポイントは熱々のお茶をかけるところです。熱いお茶をかけると、ふなずしの身がすごく柔らかくなり、甘味やうま味の油分等が染み出てきます。卵の部分を箸で崩してお茶とごはんに溶かして、ズルズルっとかきこめば、鼻からふなずしのあの香りが抜けてそれはもう最高です。

裏技

ふなずしのお茶漬けには滋賀県人それぞれこだわりの食べ方があります。

熱々のごはんの中に埋める

ふなずしの切り身を、お茶碗に盛った炊き立てのご飯の中に埋めるて数分待ちます。
ご飯の熱によってふなずしの身がやわらかくなって、近江米のおいしいごはんにふなずしの香りが交わっていい感じになります。

蓋をして蒸らす

お茶をかけたらすぐにでも食べたいところですが、お茶碗に蓋をして1分ほど待ちます。熱で蒸らされたふなずしがより柔らかくなります。

お湯かお茶か

ふなずしにお茶をかけるのか、お湯をかけるのか。ポットから直接お湯を注いで食べる人もいます。
お茶の香りがふなずしの臭みを中和して味を引き出すことからも、お茶をかける人も多いです。
ほうじ茶等、普通のお茶を用いますが、抹茶に塩を少し溶かしたお茶をふなずしにかけて食べる食通もいるようです。

頭もしっぽも食べる

ふなずしと言えば、オレンジ色の卵が詰まった腹のあたりをイメージしますが、ふなずしは頭からしっぽまですべて食べることができます。もちろん骨も柔らかくなっているので、捨てるところはありません。
ふなずし通は頭の部分を好みます。頭の部分であっても、しっかり漬かって発酵したふなずしなら、熱々のお茶をかければ頭もトロトロに柔らかくなって、かみしめるほどにうま味が染み出てきます。
なんといっても一匹のふなずしに頭は1つしかないですからね。

味付けはひとそれぞれ

ふなずし自体が発酵によりうま味が染み出ているので、特に何かの味付けをする必要はないですが、好みで薬味等をアレンジする方も多いです。

  • 味の素
  • 塩昆布
  • わさび
  • かつおぶし
  • とろろこんぶ
  • あられ

基本的には、

ふなずしのうま味+醤油+お茶の香り

の組み合わせで十分おいしいのですが、好みによっては上記の物を少し足すだけで、また新たな味と出会うことができます。
普段の家庭で日常の食事として食べる時にお茶漬けで食べる場合が多いので、飽きないように様々な味付けがアレンジされています。
おそらくふなずしが好きな人なら、上記のすべての味付けを気に入ると思います。

そのまま

初めてふなずしを食べる人は、まずはこの食べ方がおすすめです。ふなずし自体の味や香りを楽しむには、そのままを食べます。
3ミリ厚程度にスライスされたふなずしの切り身をそのまま丸ごと口に入れて噛みます。
卵以外の身の部分は若干硬いかもしれませんが、何度も口の中で噛み続けていると甘味がでてきます。

酒の肴には最強

ふなずしはお酒のおともに最高です。日常食以外でふなずしを食べる時は、お正月や祝い事等のお酒の席が多いことから、日本酒等と非常に良く食されることがあります。ふなずしの酸味としょっぱさがお酒にぴったりです。
滋賀には近江米をつかったおいしいお酒もたくさんあるので、滋賀の地酒でふなずしを楽しむのもよいかもしれません。

卵と身の部分はどうやって食べる?

初めての人は、切り身であってもどうやって食べるのかを迷うかと思います。卵のところと身のところを分けて食べるのか、一緒に食べるのか。

卵の部分だけ食べる

卵の部分は、身の部分と比較してパサパサした食感です。
小さいお子さんには、身が硬いかもしれないので、卵の部分だけを食べたりします。
そういう意味でも本当のふなずし初心者で、臭い等が苦手な人は、この卵の部分だけを食べることから始めたらいいかもしれません。
大皿に綺麗にスライスして並べられたふなずしにおいても、やはりオレンジの卵をたくさんある部分が人気というか花形ですね。

身の部分だけ食べる

逆に通は、この身の部分の方が噛みごたえがあっておいしいという人もいます。お茶漬けにして柔らかくなるのはこの箇所で、この身の部分からうま味がしみでてきます。なので、この身の部分こそがふなずしの味ということができるかもしれません。
またこの身の部分の上側中央に背骨がありますが、しっかり漬かったふなずしはこの背骨も柔らかくなっているので、そのままおいしくいただけます。

まるごと一緒に食べる

初めての人は、切り身といえど丸ごと口に放り込むのは心配な方もいるかもしれません。でも慣れてきたら卵と身のは分けて食べずにそのまま口に放り込んでかみしめるようにして食べましょう。口の中で身のうま味と卵の食感が混ざり合って最高な味わいとなります。

ご飯のおかずとして

寿司をおかずにご飯を食べると聞くと、何か変って思う人もいるかもしれませんが、ふなずしの場合はごはんのおかずにもぴったりです。
滋賀では昔から日常食として食されてきたふなずしは、ごはんのおかずとしても普通に食卓に並んでいました。
ふなずしの切り身を数枚小皿に取り分け、そこに醤油を数滴かけます。それをおかずに、熱々の炊きあがったばかりの近江米を食べるともう最高です。
この時の醤油をショウガ醤油にしたり、大根おろしを添えたおろし醤油にしたりする人もいます。

お吸い物

お茶漬けで食べてしまう人は、なかなかお吸い物としての食べ方はしていないのではないでしょうか。
作り方は簡単で、ふなずしの切り身3枚程度に、熱々のお湯をかけて、2,3分蓋をして蒸らすだけ。
これだけでフナのうま味や脂が染み出てきておいしくいただけます。
お湯の代わりにカツオや昆布でとった出汁をかけてもおいしいです。
ネギや鰹節、細く刻んだショウガや、とろろ昆布、塩昆布を好みで入れてもおいしいです。
どうしてもふなずしは卵のたくさんつまったお腹の部分が人気で、頭やしっぽの部分は残りがちですが、頭やしっぽはお吸い物にしたら本当にトロトロの柔らかくなってうま味もたくさん染み出しておいしくいただけます。

その他の食べ方

お茶漬け、そのまま、ごはんのおかず、お吸い物、これらが滋賀県民によるふなずしの王道的な食べ方です。
その他にも、滋賀の地域によっては、さまざまな工夫をこらした食べ方があります。

ふなずし味噌汁

同じ発酵食品の味噌とふなずしの組み合わせです。

  1. ふなずしの尾や頭の部分を細かくきざみます。
  2. 水に刻んだ鮒ずしの身を入れて出汁をとります。
  3. 出汁に白みそを濃いめで溶きます。
  4. 刻んだネギを入れます。

ふなずしの中でも頭は非常にうま味が詰まった部位ですが、他の部分よりも固くて食べずらいので、お茶漬け等にして食される事が多いです。その頭やしっぽの部分を刻むことによって、うまみを引き出し食べやすくしたのがふなずしの味噌汁です。
味噌の種類を変えることによって様々な味を楽しむ事ができます。

ふなずしのてんぷら

見た目からふなずしが苦手な人もいるかと思いますが、てんぷらなら衣をつけてあげることにより、衣の中にふなずしの見た目や臭いもとじこめてしまいます。また熱を通すことにより、鮒ずしをそのまま食べるよりは、初心者には食べやすい料理かもしれません。

  1. ふなずしを3mm厚程度にスライスする。
  2. スライスしたふなずしの切り身を、カマンベールチーズで包む。
  3. チーズで包んだふなずしの切り身をさらに大葉で包む。
  4. てんぷら粉を絡めて油で軽く表面の衣がカラッとなる程度に揚げる。

ふな特有の臭み等に対して梅干しの酸味が非常に良く合う為、梅肉ソース等を付けて食べるのがおすすめです。

握り寿司

スライスした切り身を、酢飯で握ったシャリの上に乗せて完成です。
好みによってワサビを入れてもいいでしょう。
ふなずしをご飯のおかずとして食べることもありますし、またお茶漬けで食べる時はワサビを乗せる場合もあるので、握りずしという食べ方はそれらをまとめたような物です。
鮒寿司の発酵による酸味と酢飯の酸味が混ざり合って、なんとも言えないおいしさです。

ヒレ酒

鮒寿司の尾びれや背びれを切り取り、強火の遠火で焦げないようにじっくり炙ってカリカリに仕上げます。
このカリカリに炙ったヒレを熱々の日本酒に浮かべて3分ほど待ちます。
炙ったことにより、鮒の香りが香ばしくなって、おいしいひれ酒になります。

また、ふなずし通は、頭の部分をヒレ同様に炙ってカリカリにして、日本酒に浮かべてひれ酒ならぬ、鮒寿司の頭酒として楽しんだりもします。

雑炊

体力が落ちている時や、風邪をひいたとき等の食が細い時に、この鮒寿司の雑炊食べることがあります。
ふなずしの身を細かく刻みます。
この時、尾の部分や頭の部分等、そのまま食べるには少し硬い部分等を刻んで用いるとよいでしょう。
刻んだふなずしの身を入れて、あとは普通の雑炊を作るのと同じように炊けばできあがります。
鮒寿司の風味が出た普段の雑炊とはちょっと違った味を楽しむことができます。

甘露漬け

通常の手法で漬けた鮒寿司を、一旦樽から取り出し、飯(いい)を取り除いて、そこからさらに酒粕に漬けます。
ただ、これを自宅でやっている人はあまりおらず、鮒寿司メーカーが甘露漬けとして売っている物を食べる方が手間暇等もなくお勧めです。
本漬けよりも食べやすいので、はじめて鮒寿司を食べる人や、本漬けはどうしても食べられない、という人におすすめです。

燻製

鮒寿司を燻製にして食べることもできます。ただし燻製にするには、専用の設備や適した温度等の自然環境も必要なので、個人の方がふなずしの燻製を作るのはなかなか難しいのではないでしょうか。
基本的には冷燻製で作ります。通常の高温の煙で燻す方法ではなく、約25度以下の低温で長時間にわたり燻製する必要があります。長時間燻製の為水分が抜けた仕上がりになります。
25度以下の低温を長時間安定的に保ち続ける環境がないとうまくつくることができないので、通常の鮒寿司を自宅で個人が燻製にするよりは、最初から燻製となった商品を買うのがおすすめです。

近年の新しい食べ方

ふなずしのグラチネ

グラチネとは、料理をオーブンに入れて表面に焼き色を付ける調理方法の事です。この方法により表面にできた焼皮の事をグラタンと言います。
ふなずしのグラチネとは、スライスしたふなずしの上にソースをかけて、バーナーでソースをあぶり焼皮を付けた料理です。

  1. ふなずし1尾を5mm厚程度でスライスする。
  2. 日本酒を火にかけて煮詰める。辛口のお酒がおすすめ。
  3. 煮詰めた日本酒に生うにを入れて溶く。
  4. そこに卵黄を入れて混ぜ、ソースを作る。
  5. スライスしたふなずしの上にソースをかける。
  6. ソースをバーナーであぶり、ソースの表面に軽く焦げ目を付ける。

フナズシパスタ

材料(4人分)

  • 鮒ずし:1尾
  • にんにく:1片
  • 赤唐辛子:1本
  • 玉ねぎ:100g
  • ういきょうの葉:30g
  • ういきょうの茎:80g
  • サフラン:少量
  • 白ワイン:100ml
  • オリーブオイル:適量
  • パン粉:30g
  • 塩/こしょう
  • パスタ:250g

調理方法

  1. ふなずしから卵を取り分けて、身の部分とごはんの部分も分ける。
  2. フライパンにオリーブ油大さじ3杯とパン粉を入れて、軽く色が付く程度に炒める。
  3. フライパンに赤唐辛子、ニンニク、オリーブ油大さじ2杯を入れて弱火で炒める。
  4. にんにくが炒まれば玉ねぎを加えて、しっとりするまで炒める。
  5. 水3リットルを沸かして塩20gを入れそこに、ういきょうの葉と茎を入れ10分強ゆがく。
  6. ゆがいたういきょうを氷水に漬けて冷やし、その後ザルで水気を切り、みじん切りにする。
  7. しんなり炒めた玉ねぎに、ふなずしの身とごはんを加えて、ふなずしの身の形がなくなるまで炒める。
  8. 白ワインを加えて煮詰める。
  9. サフランと茹で上がったういきょうの茎を加える。
  10. パスタを湯がいて、ゆで汁150mlをソースに加える。
  11. 茹で上がったパスタの水気を切り、ゆで汁を加えたソースに加える。
  12. ソースを絡めながらパスタに火を通し、アルデンテの状態にする。
  13. オリーブオイルとみじん切りにしたういきょうの葉を加えて混ぜる。
  14. 塩/こしょうで味を調える。
  15. 皿に盛り付けて、炒めたパン粉と、取りおいておいた鮒ずしの卵をほぐして上部に散らしかける。

ふなずしとトマトの冷製パスタ

トマトの天然自然の酸味に対して、ふなずしの発酵による酸味が組み合わさって、不思議な味わいとなります。

  1. トマトは事前に冷やして準備しておく。
  2. トマトをさいの目に切る。
  3. ふなずしを3mm厚程度にスライスし、スライスした切り身をトマト同様の大きさ/形状に刻む。
  4. 刻んだトマトとふなずしの切り身をオリーブオイルで和えてソースを作る。
  5. 湯で上げて冷やしたパスタの上に、トマトとふなずしのソースをかける。

はさみ揚げ

ふなずしに熱を通す調理は珍しいが、この料理は油で揚げることによって、ふなずしの風味を衣の中に閉じ込めます。

  1. 食パンの耳を切り取る。
  2. 耳を切り取った食パンを半分に切り、長方形にする。
  3. 長方形の食パンの片側側面から切り目を入れて袋状にする。
  4. ふなずしを3mm厚程度にスライスする。
  5. 食パンの切り目に、スライスしたふなずしの切り身2枚を入れる。
  6. ふなずしを入れた食パンを油で揚げる。

ふなずしのチーズばさみ

チーズもまたふなずしと同様に有名な発酵食品です。チーズとふなずしという二大発酵食品を組み合わせた手軽な料理です。

  1. ふなずしを3mm厚程度にスライスする。
  2. スライスしたふなずしを、カマンベールチーズで挟む。

様々な種類のチーズで試してみるのもおすすめです。

なめろう

ふなずしは、鮒丸々一尾を食べることができます。もちろん頭も尻尾も全て食べられるので捨てる箇所はありません。ただどうしても頭や尻尾が食べ辛いという人には、頭部や尻尾の部分を刻んでなめろうにすればとても美味しく食べられます・

  1. ふなずしの頭部と尻尾の部分を細かく刻む。
  2. ふなずしのご飯の部分も混ぜて更に包丁で叩くように刻む。
  3. 好みの食材を入れる、ペースト状になるまで包丁で叩く。

好みの食材には、ミョウガ/ワサビ/大葉等がよくあいます。ふなずし茶漬けでワサビを入れる人もいるので、これらの薬味がふなずしにあうことはご理解いただけると思います。
それ以外にも、海苔やチーズ、マヨネーズ等も良く合います。

カナッペ

ピザ

前菜

豚しゃぶ

しんじょう

浅漬け

 

私のお決まりの食べ方

私にはこだわりのふなずしの食べ方があります。お作法のようなものですが、皆さんにも紹介します。

  • Step1:切り身のスライスを数枚小皿に取り分けて、ビールを飲みながらそのまま食べる。
  • Step2:ふなずしに味の素と醤油をかけて、熱々の近江米のごはんを食べる。一杯目。
  • Step3:ご飯をおかわりして、同様にご飯で食べる。二杯目。
  • Step4:切り身に醤油と味の素をかけて、ごはんの上にのせて、熱々のお茶をかけてお茶漬けで食べる。三杯目。
  • Step5:切り身だけをお茶碗に入れ、熱々のお茶をかけ、ワサビを添えて、お吸い物のようにして食べる。

これが私のふなずしフルコースです。お正月やお盆等、親戚が集まった時に振舞われるふなずしを、私はいつもこのようにして食べています。