当サイトでも何度か掲載してきましたが長い目で見ると、鮒寿司の消費量や生産量は年々減ってきています。
生産量減は、そもそも鮒寿司を自宅で漬けようとする人が減ってきていることが大きいと思われます。
生産量が減っていく事は、鮒寿司が未来永劫に渡り引き継がれていくにおいて非常に危惧すべきことですが、私がなによりも心配なのは消費量が減っていくことです。
ニーズがある限り、それを供給しようとする人は現れるので、鮒寿司を食べたい!と思う人がいる限り鮒寿司文化は消滅しません。
もちろん原材料となるニゴロブナの激減や、製造者が減っているという課題もありますが、ニーズさえあればニゴロブナの生態系を守る為に琵琶湖を綺麗にしたり、ニゴロブナの生息環境を整えたり繁殖させたりすることは、日々の技術の進化により解決することができます。
しかしニーズが無くなってしまえば、誰もが欲していない物を作ろうとする人はいなくなるので、そううなればそれこそ鮒寿司食文化消滅の危機です。
鮒寿司団塊ジュニア世代が最後の砦
しかしここ十数年の変化を見ていると、この鮒寿司ニーズの減少を食い止めることはできていません。むしろここから先数十年で、鮒寿司を食べたいと思う人は激減していくと思われます。
まず小さい頃から鮒寿司を食べていないと、なかなか鮒寿司をおいしいと思って常に食べ続けてくれる愛好家にはなりえません。
そう考えると、私個人的な見解としては、昭和50年代生まれが最後の鮒寿司世代であり、これを「鮒寿司団塊ジュニア世代」と呼んでいますが、この世代が世を去るとほぼ鮒寿司を食べたいと思う人はいなくなります。
となるとあとは、いかに新規の鮒寿司愛好家を獲得するかに全てがかかっています。
次世代鮒寿司愛好家を生み出すには
もちろん興味本位で鮒寿司を食べたいという人は多く、その単発ニーズによる需要はある一定量存在しているのですが、この単発ニーズから、愛好家が沢山生まれない限り、いずれこの単発ニーズによる需要の総量も先細っていって、鮒寿司の食文化は消え去ってしまいます。
となると愛好家になりえるための、分母となる単発ニーズの総量を圧倒的に増やすしかありません。この総量が10倍になれば、愛好家も10倍に増えるはずです。
そうなんです、もう日本国内だけに必死にアピールし続けても、鮒寿司のニーズが拡大することはないのです。
鮒寿司のネット発信
ひと昔前なら鮒寿司を世界にアピールすることなんて、ほぼ無理だったかとおもわれます。
しかし現在においては、ネット環境の成熟に伴い、非常に効率よく世界中に情報を発信することが可能になりました。
最近でも面白い例として、YouTubeの自動再生機能によって、日本の80年代ミュージックが世界中でひそかに人気を集め始めているというニュースもありました。
つまりこれまででは巡り合うこともなかったような物と人が、距離や時間を超えて出会えるようになったのです。
音楽というフォーマットの整った物は、機械学習によりその嗜好や傾向等をモデル化することが比較的容易なものです。
「この音楽を聴いている人は、このような音楽にも興味を持っています」等のレコメンドをインターネット上で見たことはあると思います。このようなデータの学習は今後より広い範囲で適応されることになり、このような生活習慣、嗜好、価値感の人は、鮒寿司が好きなはず、鮒寿司をおいしいと思うはず、というレコメンドができるようになると思われます。
ロジスティックの進化が鮒寿司を世界にはばたかせる
また近年、グローバルなロジスティックは急激なスピードで進化しています。海外のオンラインショップで注文した商品が翌日には届く、というような事まで起こり始めています。
滋賀県で漬け樽から取り出されてパッケージされたての鮒寿司が、翌日には海外の鮒寿司愛好家の元に届くという時代も、もうそこまできています。
超一流のマーケティング戦略が必要
鮒寿司の食文化を絶やさない為にも、日本国内だけではなく、世界に発信して世界で消費される物にしていかないといけないということが分かったかと思います。
またそれを可能とする、オンライン(ネット)とオフライン(ロジ)の環境も、日々すごいスピードで進化していることもご理解いただけたかと思います。
インターネットが登場した当時クリックアンドモルタル(Click and mortar)というような事が叫ばれていました。今から約20年程前ですね。あの頃は具体的にイメージがわかなかったですが、まさにそのような時代に突入したのです。
では、このような鮒寿司が置かれた現在における時代背景と、技術環境の組み合わせにおいて、具体的にどうすれば世界で消費されるような展開に持ち込むことができるでしょうか。そのためには、以下の要素が重要かと思われます。
鮒寿司は凄くくさい!
これは紛れもない事実です。もし鮒寿司にここまでの匂いがなかったら、おそらくそこまでの注目を集める食べ物でもなかったでしょう。
この臭さはむしろ個性です。まずは振り向いてもらうために、この個性を徹底的にプッシュしていく必要があると思われます。
鮒寿司は臭いだけではない
国内の鮒寿司に興味関心を持つ人の大半は、すごくくさい!から興味を持ち、やっぱり臭かった。これは食べられない、で終わってしまっています。
何故臭いのか?この臭さが意味するものは何なのか?という鮒寿司の本質をもっと分かりやすく発信していく必要があります。
世界標準のプロモーション
もはや国内向けだけにプロモーションをしていても限界があることは明白です。日本人向けに鮒寿司のECサイトを運営したり、ブログを運用していても意味がなく、世界基準のプロモーションを行っていくことが必要です。
では世界基準のプロモーションとは一体何なのでしょうか?
例えば身近な存在としては、Facebook等も世界標準なプロモーションをするためのツールです。
また先程述べたようなグローバルなロジ環境や、アマゾン等のコマースプラットフォームもツールです。
アマゾンは今後よりグローバルなECを推進するための革新的な技術やビジネスを構築してくると思われます。FBA(フルフィルメントbyアマゾン)も今後すごい勢いで進化して、誰もが世界を相手に商売できるようになると思われます。
マーケティングのプロ
世界基準のプロモーションが、フェイスブックやアマゾンFBAを使ったりしてのEC、ということくらい誰でも理解していると思います。
しかし結局は、これらのグローバルなトレンドを見越して、プロモーションや流通等も理解してマーケティングができる人材と、それを推進するための環境が必要になってきます。
以前当サイトでも、滋賀県の鮒寿司の蔵元が鮒寿司を製造するための資金を募るクラウドファンディングのキャンペーンを紹介しましたが、もはやその規模ではなく、世界に発信して行く為の支援を募らないといけないのかもしれません。