鮒寿司総合情報サイト

滋賀の家庭で行われている鮒ずしの漬け込みとは?

ふなずしを食べる滋賀県民がかなり減ってきてはいますが、それでも未だに自家製のふなずしを漬けている家庭は滋賀県内にたくさんあります。
今回はそんな自宅でふなずしを漬けている蒲生町の田中さんのお宅でのふなずし漬けについて取材をしました。

ふなずしはいつからご自身で漬けるようになったのですか?

わしが小さい頃から食卓には普通にふなずしが並んでおり、小さい時から普通に食べていたけど、母が歳をとって気づけばわしが漬け込みを引き継いだって感じやな。

漬け込みの方法は小さい頃から見とったし、母に聞いたりしながら覚えよった。
わしの母もそんなふうにして漬け込みを覚えよったんじゃないかな?

これを遡れば、ご先祖様代々1,000年以上昔から、こうやってふなずしの漬け込みや食文化は引きつがれてきよったんやないかな。

鮒はどうやって手に入れているのですか?

今は業者に塩切した鮒を注文して買ってるわ。
毎年3月頃にいつもお世話になっている業者がおるから、そこに電話して毎年40キロ分の塩切ブナを買ってるんや。

昔は塩切も自宅でやっとったけど、最近は塩切は業者にお願いして、自宅では本漬けをしたり、本漬けまでした樽を丸ごと業者から購入しとる家も多いんちゃうか?

どのような鮒を使っているのですか?

鮒ずしはやっぱりニゴロブナが一番うまくできるから、最近は獲れなくなってきたから高いけど、それでもやっぱりニゴロブナやな。
琵琶湖にはエリ漁というのがあるんやけど、そのエリで獲れたニゴロブナが一番おいしいふなずしがつくれるわ。

本漬けはいつやるんですか?

毎年春先に注文しとった塩切鮒が6月上旬に届けられるんで、その鮒を梅雨明けの晴れた日を選んで本漬けしてます。本漬けとは飯漬けのことやね。

だいたい7月上旬頃ちゃうやろか。本漬けは暑い日におこなわんとあかんので、毎年梅雨明け後の恒例行事みたいなもんや。

本漬けの準備等を教えてください

飯漬けの日は天気予報等を確認して、明日晴れそうやなーと分かったら、前の日に、塩、藁、竹の皮、鮒を洗う竹べらとかを用意しますんやわ。
竹ベラは毎年近所の竹林に行ってとってきた竹で自作しております。

あと桶の上に敷く三つ編みを藁で編み込んで作ります。
最近ではビニール紐でこの編み込みを作る人もいるけど、うちはいまだに藁をつかっとります。

当日は朝からごはんを炊くんやけど、鮒2キロに対して5升の量を炊きます。炊きあがったごはんは冷まします。

本漬けはどのようにして行うのですか?

本漬けの準備が終わったら、塩切鮒を洗います。
塩が鮒の表面やエラの裏側や体内にも付着しているので、水道水で綺麗に流し落とします。

鮒の口から水道水を直接流し込んで、竹べらを使って丁寧に塩や汚れ、残っているウロコ等をおとしていきます。
ウロコが少しでも残っていると仕上がりに影響が出るので、見落とさないようにします。

塩切の時に業者さんがしっかり内臓を取り除く処理をしてくれてはるけど、取り残し等がないように竹べらを使って鮒の体内に残っている内臓等を取り除きます。
この時、鮒の卵を傷付けないようにします。

結構丁寧で手間のかかる作業ですね?

そうやな、やっぱりしっかり仕込んであげないとおいしいふなずしにはならんさかい。
いかに良い状態で発酵させるかが重要やから、ちょっとの手抜き等が仕上がりの差に影響をおよぼしよるんやわ。

いよいよごはんに漬けるんですか?

いや、まだや。
綺麗に洗った鮒を今度は水切りします。
ここでしっかり水分をとって乾燥させておかないと、味がおちてしまいよります。
だいたい梅雨明けの晴れた日なら、半日ほど天日干しにしたら乾きよるわ。

ついに本漬けですね!

そうや!本漬けにはごはん以外にも塩もぎょうさん使います。
1升のごはんに対して1合ちょいの塩を混ぜ込んで、その塩のまざったごはんを鮒のエラの下にも挟み込んで、桶の底から、ご飯/鮒/ご飯/鮒・・・の順に繰り返して何層にもして重ねていきます。

上下だけでなく、前後左右の鮒と鮒の間にもご飯をしっかり入れて、鮒一匹一匹がご飯に包まれるようにして漬けていきます。

あとこの時に気を付けるのが、鮒とご飯の層を水平に積み上げていくことや。
そうせんと重石を乗せた時に傾いたりして、全ての鮒に均一に重みがかからず発酵にムラがでてしまいよるさかいにな。

桶の上まで漬け込んだら竹の皮を5枚くらい使って蓋をして、藁で編んだ三つ編みの縄を桶の内側の周囲に這わせるように1週敷く。
そんで漬物樽の蓋をして重石を乗せる。

2斗の桶やと鮒が20キロほど漬かるな。2斗って分かるか?
1升は約1.8リットルで、日本酒等の入っている瓶を一升瓶っちゅうやろ。つまり1升とは1.8リットル分の体積や。
10升で1斗になるさかい、1斗は約18リットル分の体積。
そやから2斗の桶っちゅうたら、約36リットル分の体積のある桶や。そこに鮒が20キロほど漬かるさかい、毎年業者から購入した塩切ブナ40キロを、この2斗の桶に二杯分漬け込んでるんや。

これで漬け込みは終わりですか?

そやな、一応これで本漬けは終わりやけど、このままの状態で水をはらずに二日ほど置いておくんや。
そうすると桶の中が真空状態になるから、そうなったら水を樽に張るんや。
そうせんと真空状態になってないのに水をはると、水が桶の中の方にまでしみ込んでしまっていって、発酵に影響をあたえてしまいよるさかい。

あとはこのまま管理しておけばおいしいふなずしができるのですか?

まあ基本的には放置やけど、水はこまめに変えんといかんな。
特に夏の暑い時期は発酵しずぎで重石が押し上げられたリ、傾いたりするさかい、毎日ちゃんと水を変えて発酵をコントロールする感じや。

こんな感じでしっかり漬け込んだら、その年の年末にはおいしいふなずしが完成しているってこっちゃ。